風のままに進むんだ

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ベートーヴェン 交響曲7番(リズム芸の極致)

ベートーヴェンは9曲の交響曲を作曲した。

有名なのは5番(運命)、9番(第九)だろう。6番(田園)も、冒頭は誰もが聴いたことあるメロディだ。

しかしここ十数年ぐらいで、7番の人気が高まっている。
きっかけは「のだめカンタービレ」のドラマだろう。
ヴァイオリンを天井に向けたり、チェロバスを一回転させたりしながらの演奏で、この曲は爆発的に知名度が上がった。

4つの交響曲は、それぞれ全く異なる趣向を持つ。
5番は「展開芸」、9番は「インパクト芸」、6番は「旋律芸」、そして7番は「リズム芸」だ。

1楽章は特にリズム芸が顕著である。
主題以降、符点8分-16分-8分の音型で成す、一貫したリズムで曲を支配する。


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とても不思議に思うことがあるのが、ウィレム・メンゲルベルクという指揮者の録音だ。
彼はオランダの生んだ屹立する鬼才である。

世界最高レベルのアンサンブル能力まで育て上げたアムステルダム・コンセルトヘボウ(当時)を操り、
テンポを自由自在に操作して独自の解釈で音楽を生み出す指揮者である。

一見するとリズム芸とはかなり相性が悪そうなのだが、彼の7番は絶品だ。
この録音はまだマシで、1940年のライブ録音はもっと激しくテンポが上下動する。
3楽章は正直酷過ぎるが、それを差し引いてもとにかく魅力的である。

特に美味しいのが1楽章のコーダ~終結部分。
ppからffまで一通り盛り上がった後、いきなりテンポが落ちて低弦が波のような符点のリズムで攻めてくる。
これが癖になる。

正直に言えばメンゲルベルクの指揮は「紅生姜を入れ過ぎた牛丼」である。
元の味が何なのか、もはやよく分からない。
初めて牛丼を食べる人には、全くおすすめできない。

しかし紅生姜(メンゲルベルグの味つけ)が好きな人は、もうやめられないのである。